給与計算は毎月必ず発生し、金額を間違えられない業務です。しかも社会保険料や所得税は法改正で変わるため、自社の表計算で管理し続けるのは負担が大きくなります。

マネーフォワード クラウド給与は、計算から明細配布、会計への仕訳登録までをつなぐサービスです。この記事では実務の流れと、どの帳票がこのサービスで作れて何が作れないのかを整理します。

何ができるサービスか

  • 給与計算(月給・時給・日給)と賞与計算
  • 所得税の自動計算
  • 社会保険・雇用保険・厚生年金保険料の自動計算
  • 残業手当(残業・深夜残業・固定残業)と通勤手当の自動計算
  • Web給与明細(PC・スマートフォン対応)と賞与明細
  • 前月比較での支給内容の確認、ワンクリック振込
  • マネーフォワード クラウド勤怠・クラウド経費との連携
  • クラウド会計への仕訳連携

作成できる帳票

給与明細、支給控除一覧表(給与・賞与、部門別も可)、賞与明細、所得税徴収高計算書(納特にも対応)、給与振込一覧表、賞与振込一覧表、住民税徴収額一覧表、労働者名簿、賃金台帳、賞与支払届、退職者の源泉徴収票、源泉徴収簿、各人別控除事績簿(定額減税)、通勤手当一覧。

「給与」では作れない帳票があります。ここを勘違いしていると年に一度困ります。

  • 算定基礎届・月額変更届 → クラウド給与ではなくマネーフォワード クラウド社会保険の機能です(「定時決定」「随時改定」)。同じプランに含まれていますが別サービスです
  • 給与支払報告書(現行年分) → クラウド給与では2020年分までしか出力できません。現行年分はクラウド年末調整の機能です
  • 源泉徴収票(現行年分) → 退職者分はクラウド給与で作れますが、年末調整に伴う分はクラウド年末調整で作成します

なお算定基礎届は、クラウド社会保険で定時決定を行うために4月〜6月の3ヶ月分の給与計算を確定しておく必要があります。

初期設定:最初の1回だけやること

事業所情報と基本設定を登録する

事業所の情報、締め日・支払日、社会保険の加入状況などを登録します。

従業員を登録する

従業員情報を登録します。従業員番号は他サービスと必ず揃えてください(後述)。Web給与明細を使う場合はメールアドレスも登録します。

支給項目・控除項目を設定する

自社の手当と控除を設定します。クラウド経費から立替経費を取り込む場合は、「基本設定」>「支給項目」で「立替経費」にチェックを入れておきます。

勤怠連携を設定する(クラウド勤怠を使う場合)

クラウド勤怠側で全権管理者メニュー →「連携」→「外部連携」→「外部システム連携用識別子」のAPI KEYをコピーし、クラウド給与側の「連携設定」>「勤怠管理」で「連携する」を選んで貼り付け、「登録する」。

続いて「従業員情報」画面 →「従業員の追加/更新▼」→「マネーフォワード クラウド勤怠の従業員と紐づける」で紐付け、勤怠列にチェックマークが付くことを確認します。

会計側で仕訳ルールを設定する

クラウド会計の「給与から仕訳のルール設定」画面で、仕訳計上日(締め日か支払日か)、仕訳計上単位(部門別か全社か)、仕訳の集計有無を決め、項目ごとの勘定科目・補助科目・税区分・部門を設定します。

毎月の運用:給与計算から明細配布まで

勤怠データを取り込む

「給与計算」→「メニュー」→「マネーフォワード クラウド勤怠から勤怠データをインポート」を選び、集計期間(締め日に合わせる)と対象項目を指定して「勤怠をインポート」します。

従業員番号が一致していないと勤怠データは連携されません。その他の前提として、「給与担当者」権限が必要で、両システムの締め日を揃えておく必要があります。またクラウド勤怠は時間を60進数で出力するため、「基本設定」>「勤怠項目」で単位の調整が必要になる場合があります。

連携されるのは勤怠項目設定でチェックした項目のみです。

立替経費を取り込む

クラウド経費で「集計(支払処理)」まで進めた精算データは、「給与計算」画面のメニュー →「マネーフォワード クラウド経費から立替経費をインポート」で取り込めます。給与と一緒に振り込めるため、振込回数を減らせます。

前提として従業員番号と事業者番号(8桁)の一致が必要で、精算データ作成日から2ヶ月以内の給与計算期間のみが取得対象です。

金額を確認して確定する

支給・控除の内容を確認します。前月比較の機能があるので、前月と大きく違う従業員だけを重点的に見るという確認の仕方ができます。問題なければ「確定処理」をクリックします。

明細を配布する

Web給与明細として配布します。従業員はマネーフォワード クラウドのマイページmypage.moneyforward.com)の「配付書類」画面で、給与明細・賞与明細・源泉徴収票を確認できます。

管理者がクラウド給与またはクラウド年末調整側でログイン情報(メールアドレス等)を設定しておく必要があります。

退職した従業員が源泉徴収票を確認するには、「退職年月日」が登録されていること最終の給与・賞与の確定処理が完了していること、そして最終支給日以降であることが条件になります。退職手続きの際にあわせてご確認ください。

会計にどう連携されるか

  1. クラウド給与で「確定処理」を行う
  2. クラウド会計・確定申告の「自動で仕訳」>「給与から入力」画面を開く
  3. 「対象データ」をクリックして支給月を選ぶ
  4. 仕訳候補を確認して「登録」

「給与から仕訳のルール設定」で「仕訳の集計」を有効にしておくと、借方・貸方の勘定科目・補助科目・税区分・部門がすべて一致する明細の金額が合算されます。仕訳の本数を減らしたい場合に有効です。

操作には「給与担当者」権限が必要です。

社会保険の事務もつなげて効率化できる

給与計算を確定させたあとに残るのが、入退社の手続きや算定基礎届といった社会保険の事務です。ここはクラウド給与の担当範囲ではありませんが、同じプランに含まれるマネーフォワード クラウド社会保険を使うと、給与とひと続きの流れで処理できます。

効率化の理由は会計連動と同じで、クラウド給与と同じ従業員情報を参照するためです。入社のたびに給与ソフトと届出書類へ同じ内容を二度打ち込む、という作業がなくなります。

作成できる主な届出

場面 作成できる書類
入社 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届、雇用保険 被保険者資格取得届
退社 被保険者資格喪失届、雇用保険 被保険者資格喪失届、離職証明書
毎年7月 算定基礎届(定時決定)
給与額が大きく変わったとき 月額変更届(随時改定)
賞与の支給時 賞与支払届
扶養家族の変更 被扶養者(異動)届
毎年6〜7月 労働保険の年度更新(概算・確定保険料申告書)

作成した届出はe-Gov経由で電子申請できます。印刷して年金事務所やハローワークへ持ち込む・郵送する手間がなくなり、申請状況や返却される公文書も画面上で確認できます。電子申請を使う場合はGビズID(gBizIDプライム)または電子証明書の準備が必要です。

効果がいちばん体感しやすいのは算定基礎届です。4月〜6月の給与計算を確定しておけば、そのデータから定時決定を作成できるため、7月に3ヶ月分の支給額を集計し直す作業がなくなります。逆に言えば、給与側の確定処理が終わっていないと定時決定は進められません

使い始める前に決めておくこと

  • 事業所情報(適用事業所の記号・番号、労働保険番号)の登録
  • マイナンバーの収集・保管の運用ルール
  • 電子申請を行う場合のGビズIDの取得(発行に日数がかかるため早めに)
  • 従業員番号を給与・勤怠と揃えること(後述のつまずきポイント1と同じ理由です)

当法人のご支援には、社会保険に関する手続き代行・相談業務は含まれません。システムの操作方法・設定に関するサポートとなります。社会保険の手続きについては会社にて実施していただく(または社会保険労務士にご依頼いただく)形になります。

つまずきやすいポイント

1. 従業員番号の不統一 勤怠連携・経費連携のどちらも従業員番号の一致が必須です。給与は「001」、勤怠は「1」のように振ってしまうと連携できず、後から揃える作業が発生します。サービスを増やす前に番号の付け方を決めておくのが最も確実です。

2. 締め日の不一致 給与と勤怠の締め日が揃っていないと、勤怠の取り込み期間がずれます。「20日締め25日払い」なのか「末締め翌月10日払い」なのかを、両システムで一致させてください。

3. 「給与では作れない帳票」の把握 冒頭に挙げたとおり、算定基礎届・月額変更届はクラウド社会保険、現行年分の給与支払報告書はクラウド年末調整です。年に一度しか使わない帳票なので、必要になった時期に慌てないよう事前に確認しておくことをおすすめします。クラウド社会保険でできることは前章「社会保険の事務もつなげて効率化できる」に整理しました。

4. 仕訳計上日と仕訳計上単位の設計 締め日基準か支払日基準か、部門別か全社かは、後から変えると過去の月次と比較できなくなります。最初に決めるべき設計事項です。

5. 立替経費の2ヶ月制限 精算データ作成日から2ヶ月を過ぎると給与への取り込み対象外になります。承認が滞留しやすい会社では運用ルールが必要です。

自分でできる範囲と、任せたほうが早い範囲

内容 おすすめ
毎月の給与計算・確定処理 会社で運用
明細の配布 会社で運用
従業員番号・締め日の設計 税理士に相談(導入前に)
仕訳計上日・計上単位の設計 税理士に相談
給与仕訳のチェック 税理士(当法人)
年末調整 税理士(当法人)/クラウド年末調整
社会保険・労働保険の手続き 会社(または社会保険労務士)

社会保険に関する手続き代行・相談業務は税理士の業務範囲外です。当法人ではシステムの操作方法・設定に関するサポートは行いますが、手続きそのものは会社にて実施いただく形になります。

年末調整についてはマネーフォワード クラウド年末調整の使い方、シリーズ全体の見取り図はマネーフォワード クラウドでバックオフィス業務はここまで効率化できるにまとめています。