立替経費の精算は、関わる人が多いほど手間が増える業務です。従業員は領収書を貼って提出し、上司が承認し、経理が内容を確認して仕訳を起こし、振込データを作る——この流れのどこかで必ず滞留します。

マネーフォワード クラウド経費は、この一連の流れを画面上で完結させるサービスです。この記事では申請から仕訳までの実務の流れと、設計でつまずきやすい点を整理します。

何ができるサービスか

  • 領収書撮影による自動入力(AI-OCR)
  • 経路検索による交通費の運賃自動計算
  • ICカードの明細読み取り
  • 日当計算・仮払申請
  • 自由にカスタマイズできる承認ワークフロー(一括承認・差戻し・代理承認・チャット)
  • コーポレートカード連携
  • 会計への仕訳連携(クラウド会計・会計PlusはAPI直接連携、他社会計はCSV出力)
  • 電子帳簿保存法のスキャナ保存・電子取引に対応

スマートフォンアプリは2種類あります。経費の登録・申請・承認を行う「マネーフォワード クラウド経費」と、NFC搭載端末でICカードをかざして明細を読み取る「ICカードリーダー by マネーフォワード」です。主要な交通系ICカードに対応しています。

初期設定:最初の1回だけやること

従業員を登録する

利用する従業員を登録します。このとき従業員番号を必ず決めておいてください。後述のとおり、給与への精算連携で番号の一致が必須になります。

経費科目を設定する

自社で使う経費科目を登録します。会計側の勘定科目とどう対応させるかを合わせて考えておくと、後の仕訳設定がスムーズです。

承認ルートとワークフローを設定する

「管理設定」>「ワークフロー設定」で、次の3つを組み立てます。

  • 承認ルート:誰が承認するかのルート。「新規追加」からステップ・承認者グループ・承認ルート名・優先度を設定します
  • 分岐ルール:申請者の属性や申請内容によってルートを変える条件(例:5万円未満は部長承認、5万円以上は役員承認)
  • ワークフロー:上記を組み合わせて運用する設定

会計サービス連携と仕訳を設定する

「管理設定」>「経費機能設定」>「基本設定」の「会計サービス連携」で連携先(クラウド会計・確定申告/クラウド会計Plus)を選び、「仕訳の連携」を有効にします。

続いて「経費機能設定」>「仕訳」画面で、支払元口座ごとに貸方の勘定科目・補助科目を設定します。仕訳テンプレートも用意できます。

日々の運用:申請から精算まで

公式ガイドでは4つのステップとして整理されています。

1. 申請者が登録・申請する

「申請」>「経費精算」>「申請一覧」から経費明細を登録して申請します。

領収書はスマートフォンで撮影すれば、日付・支払先・金額・適格請求書発行事業者の登録番号・税率・消費税額をAIが読み取ります。交通費は経路検索から運賃を自動計算でき、ICカードの明細も取り込めます。

OCRで読み取れるのは領収書のみです。請求書は対象外です。また画像の状態によっては読み取れない場合があり、1枚の画像につき1レシートが原則です(長いレシートはアプリの「ロングレシートモード」を使います)。

2. 承認者が承認する

「承認」>「経費精算」画面で承認します。一括承認・差戻し・代理承認に対応しており、申請内容についてのやり取りはチャット機能で行えます。

承認・管理権限を持っていても、その申請の承認者に指定されていなければ承認できません。「権限はあるのに承認ボタンが出ない」というお問い合わせの多くはこれが原因です。

3. 経理が集計・支払処理する

「経理業務」>「経費精算」>「集計(支払処理)」画面で、従業員ごとの精算額を集計します。ここから現金精算・銀行振込・クラウド給与への連携を選べます。

給与と合わせて支払う運用にすると、振込手数料と振込作業の回数を減らせます。

4. 仕訳を連携する

クラウド会計・会計Plusを使っている場合は直接連携されます。他社の会計ソフトの場合は「仕訳エクスポート」でCSVを出力します。

仕訳を連携するタイミングは3つから選べます。

タイミング 向いているケース
明細の作成時 発生主義で早めに把握したい
紐づく申請の承認時 承認済みのものだけ会計に載せたい
集計(支払処理)登録時 支払確定分だけを会計に載せたい

どれを選ぶかで月次の数字の見え方が変わるため、顧問税理士と相談して決めることをおすすめします。

電子帳簿保存法への対応

クラウド経費はスキャナ保存と電子取引の両方に対応しています。認証面でも、電帳法スキャナ保存ソフトの法的要件認証を経費精算システムとして国内第1号で取得しており(2016年)、電子取引ソフトの法的要件認証も取得しています(2021年)。

対応するには専用の手順ガイドに沿った設定が必要です。設定後に利用を停止・変更する場合の手順も別途用意されています。

つまずきやすいポイント

1. 承認ワークフローの設計 最も相談が多い部分です。組織図をそのまま再現しようとすると、組織変更のたびに作り直しが発生します。役職・金額・部署のどれを分岐条件にするかを先に決め、変更に強い形で組むのがポイントです。

2. 従業員番号の統一 クラウド給与に立替経費を連携する場合、両システムで従業員番号と事業者番号(8桁)が一致していないと連携されません。また精算データは作成日から2ヶ月以内の給与計算期間しか取得対象になりません。

3. 仕訳連携タイミングの選択 上記の3択は、月次決算の締め方と直結します。「支払処理登録時」にすると未払分が会計に載らないため、月次の経費が実態より少なく見えることがあります。

4. 経費科目と勘定科目の対応付け 従業員にわかりやすい経費科目名と、会計上必要な勘定科目の粒度は一致しません。ここを整理しないまま運用を始めると、経理側で毎月振り替えることになります。

自分でできる範囲と、任せたほうが早い範囲

内容 おすすめ
領収書の撮影・申請 会社で運用(従業員が各自スマホで完結)
日々の承認 会社で運用
集計・振込データ作成 会社で運用
承認ワークフローの設計 税理士に相談
経費科目と勘定科目の対応付け 税理士に相談
仕訳連携タイミングの選択 税理士に相談
電子帳簿保存法への対応方針 税理士に相談

当法人ではAI記帳を全プランで提供しており、連携された仕訳のチェックまで含めて対応しています。

シリーズ全体の見取り図はマネーフォワード クラウドでバックオフィス業務はここまで効率化できるにまとめています。