「会社を作りたいが、何から手をつければいいかわからない」「個人事業のままがいいのか、法人にすべきか迷っている」——熊本で創業を考えている方から、よくいただくご相談です。

会社設立でつまずきやすいのは、登記そのものよりも登記が終わったあとの届出です。提出先が6か所に分かれ、それぞれ期限があり、遅れると受けられなくなる制度もあります。

この記事では、設立の流れと届出の一覧を、熊本の提出先にあわせて整理します。

会社設立の流れ

株式会社の場合、大きく7つのステップで進みます。合同会社の場合は、3つめの「定款の認証」が不要になります。

→ どちらにすべきか迷っている方は、合同会社と株式会社の違い|設立費用・税金・信用を税理士が比較をあわせてご覧ください。

会社の基本事項を決める

商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金の額、決算月、役員構成、株式の内容を決めます。後から変えると登記のやり直しに費用がかかるため、ここに時間をかける価値があります。

定款を作成する

会社のルールブックにあたる書類です。上で決めた基本事項を条文の形にまとめます。

紙で作成すると収入印紙代40,000円がかかりますが、電子定款(PDFなどの電磁的記録)で作成すればかかりません。 印紙税は紙の文書に課される税金で、電磁的記録は課税文書に当たらないためです。株式会社・合同会社のどちらでも同じで、特定の事務所を通さなければ使えない仕組みではありません。ただし電子署名が必要になるため、会社設立の支援サービスや専門家を通す方法が一般的です。

定款の認証を受ける

公証役場で認証を受けます。手数料は資本金の額に応じて30,000円〜50,000円です(資本金100万円未満で、発起人が個人3人以下・取締役会を置かないなどの条件を満たす場合は15,000円)。合同会社の場合、この認証は不要です。

資本金を払い込む

発起人の個人口座に払い込み、通帳の写しなどで証明します。この時点ではまだ法人口座がないため、個人の口座を使います。

設立登記を申請する

法務局へ申請します。原則として、登記所で申請が受け付けられた日が「会社設立日」になります。縁起の良い日や月初を選ばれる方も多くいらっしゃいます。

なお、2026年2月2日以後は、一定の要件を満たす場合に、行政機関の休日を設立日として指定できる特例があります(法務省の案内)。土日や祝日を設立日にしたい場合は、事前にご相談ください。

各種届出を行う

税務署・熊本県・熊本市へ届け出ます。次の章で一覧にしています。

社会保険・労働保険の手続き

役員や従業員がいる場合に必要です。

登記が終わったあとの届出

税務署への届出

書類 期限
法人設立届出書 設立の日以後2か月以内
青色申告の承認申請書 設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで
給与支払事務所等の開設届出書 開設の日から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 期限なし(原則、提出した月の翌月に支払う給与から適用)。給与の支給人員が常時10人未満の場合に申請できます

青色申告の承認申請書は、期限を1日でも過ぎると初年度から青色申告のメリットを受けられません。 欠損金の繰越し(赤字を翌期以降の黒字と相殺できる制度)が使えなくなるため、創業期の影響は小さくありません。設立登記が完了したら、真っ先に出す書類です。

なお個人事業の場合は期限が異なります。原則はその年の3月15日までで、その年の1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内です。

このほか、資本金の額によっては消費税に関する届出が必要になります。取引先から適格請求書(インボイス)を求められる見込みがあれば、インボイス発行事業者の登録申請もあわせて検討してください。設立初年度から登録するには、その課税期間の末日までに申請する必要があります。

熊本県・熊本市への届出

提出先 書類 期限
熊本県(県税事務所) 法人設立(設置)届 事実発生日から10日以内(熊本県税条例第46条)
熊本市(市民税課 法人課税班) 法人(設立・設置)申告書 登記完了後すみやかに

県への届出は10日以内と短めです。 登記完了の連絡を受けたら、税務署とあわせて手続きしてください。熊本市以外の市町村に本店を置く場合は、その市町村への届出になります。

社会保険・労働保険(該当する場合)

次は主な事業所関係の届出です。

提出先 書類 期限
年金事務所 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 事実発生から5日以内
労働基準監督署 労働保険 保険関係成立届 保険関係が成立した日の翌日から10日以内
ハローワーク 雇用保険 適用事業所設置届 設置した日の翌日から10日以内

このほか、対象者ごとに健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届、雇用保険の被保険者資格取得届が必要です。労働保険では、保険関係が成立した日から50日以内に概算保険料の申告・納付も行います。

法人は原則として社会保険の強制適用事業所です。 従業員がいなくても、役員報酬を受けて被保険者になる役員が1人いれば、新規適用届と資格取得届が必要になります。無報酬の役員しかいないなど、被保険者になる人がいない場合は取り扱いが異なります。

労災保険は、労働者を1人でも雇えば成立の手続きが必要です。雇用保険は、週の所定労働時間や雇用の見込みなどの要件を満たす従業員について資格取得の手続きを行います。

誰に何を頼むのか

会社設立に関わる手続きは、担当する専門家が法律で分かれています。

やること 担当
設立登記の申請の代理 司法書士(ご自身で申請することもできます)
建設業・飲食業などの許認可申請 行政書士
社会保険・労働保険の手続き 原則として社会保険労務士
税務の届出、会計体制の整備、税務申告 税理士

当法人の会社設立サポートでは、お客様ご自身がマネーフォワード クラウド会社設立に情報を入力し、システム上で定款や登記申請書が自動で作成される形をとっています。法務局への提出も、お客様ご自身で行っていただきます。

当法人がご案内するのは、会社形態・資本金・決算月・役員報酬といった税務・会計面です。登記書類の法的な判断や、作成の代理、登記に関するご相談は司法書士の業務ですので、必要な場合は司法書士をご紹介します。許認可が必要な業種の場合は、行政書士をご紹介します。

登記の代行報酬がかからないぶん、設立にかかる費用を抑えられます。

設立にかかる費用の内訳はこちら

設立前に決めておきたいこと

  • 株式会社にするか、合同会社にするか … 実費の差は11万〜12万円ほどで、設立後の手間(役員の任期・決算公告)も変わります。税金の計算はどちらも同じです。詳しくは合同会社と株式会社の違いで比較しています
  • 資本金の額 … 1円から設立できますが、対外的な信用や融資審査を考えると100万円〜300万円程度が一般的です。1,000万円以上にすると消費税の扱いが変わるため、慎重に決めてください
  • 創業融資を使うか … 開業資金を借りるなら、法人の場合は登記後の申し込みになるため、設立の段取りと並行して創業計画書を準備しておくとスムーズです。日本政策金融公庫と熊本の制度融資の比較にまとめています
  • 決算月 … 繁忙期を避けるのが基本です。設立直後の第1期が極端に短くならないよう、設立月との関係も見て決めます
  • 法人口座の開設 … 審査に時間がかかることがあります。登記が完了したら早めに動いてください
  • 会計ソフトの導入 … 設立直後からクラウド会計を入れておくと、あとから遡って入力し直す手間が生じません
  • 役員報酬の決め方 … 原則として設立から3か月以内に決めます。期の途中の増減は禁止ではありませんが、原則として増減分が法人の経費(損金)になりません(定期同額給与のルール)。実質的に年1回しか見直せず税負担に直結するため、設立前に試算しておくことをおすすめします

個人事業のままか、法人にするか

法人化の判断は、所得の水準だけでは決まりません。次の点をあわせて見ます。

  • 所得税・住民税と、法人税・役員報酬にかかる所得税の合計を比べたときの差
  • 社会保険料の負担(法人は原則加入。ここで逆転することがあります)
  • 消費税の扱い(インボイス発行事業者かどうかを含む)
  • 取引先が法人との取引を条件にしているか
  • 決算・申告にかかる費用と手間の増加

「所得が800万円を超えたら法人化」といった目安が出回っていますが、社会保険料まで含めると当てはまらないことがよくあります。 実際の数字で試算してから決めてください。

まとめ

  • 設立は7ステップ。原則として登記所での受付日が会社設立日になる(2026年2月2日以後は休日を指定できる特例あり)
  • 定款は電子データで作れば収入印紙代40,000円がかからない(株式会社・合同会社とも)
  • 届出先は税務署・熊本県・熊本市・年金事務所・労基署・ハローワークの6か所
  • 熊本県への届出は10日以内、社会保険は5日以内と短い
  • 青色申告の承認申請書は期限を過ぎると初年度から使えない
  • 登記の代理は司法書士、許認可は行政書士、社会保険は社労士の業務

※この記事は2026年8月時点の情報にもとづいています。届出の様式・期限は変更されることがありますので、実際の手続きの際は各提出先の最新の案内をご確認ください。